商標法の制定趣旨に反するという拒絶理由
2025-08-25
商標法での商標法の趣旨に反するという拒絶理由
1:初めに
商標法は第15条において拒絶理由を限定的に列挙しています。また登録後一定の規定については5年経過すると無効審判の請求が出来なくなる場合があります。
従来、同一人が同一の商標について同一の商品又は役務を指定して出願した場合には後願について「商標法制定の趣旨に反する。」との理由で拒絶するものとしてきました。その理由として条理上当然であるとか、一物一権主義に反するからという説明もありましたが、何れも納得できるようなものではありませんでした。また登録から5年経過した場合に無効審判請求ができるか否かについても明確ではありませんでした。
2:並存登録された場合の問題点
重複した商標が同一人に帰属した場合、出所混同の問題は生じませんが 、無効審判等を請求する場合の審判請求人の費用負担の増加や、専用使用権が重複して複数の者に設定されてしまう可能性等が考えられます。また、商標権の移転に係る混同防止表示請求(第24条の4)及び出所の混同が生じた場合の商標登録の取消審判(第52条の2)の規定においては、「同一の商品又は役務について使用する同一の登録商標」については対象となっていないことから、移転がなされた場合に事後的に出所混同が生じる可能性もあります。
3:何故、そのよう出願がなされるのか
では何故。そのような出願がなされるのでしょうか。要因は幾つかありますが、商標登録権者においては、先願(登録)商標の出願時には使用を予定していなかった商品・役務について、年月を経て当該商標を使用する必要が生じる事態が起きることは十分にあり得ます。そして、このような場合においては、先願(登録)商標に新たな商品・役務を追加できる制度がない以上、商標の一元的な管理をするために、先願(登録)商標と同一の指定商品・役務を含めた新たな出願をする必要があります。
4:何条で拒絶をすべきか
「同一の商品又は役務について使用する同一の登録商標」については、後願の出願は使用する意思がないとして3条1項柱書に該当するとして拒絶をすべきとの案も検討されました。しかし全く同一の指定商品・役務を指定して出願する場合は格別、そうではない場合(一部被るような場合等)には使用意思が認められるため、3条1項柱書の使用意思がないとすることは必ずしも適切ではありません。そのため、登録要件の一般条項である、「商標法3条の趣旨に反する」として拒絶されることとされました。
5:では、どのような場合が該当するか
「同一の同一の商品又は役務」は全く同一の場合のみならず、引用を一部含むようなもの等、様々な場合があります。この点、審査便覧ではその関係について以下のように説明されています。
【拒絶される場合】
⑴:本願に係る指定商品又は指定役務と引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務とがすべて同一である場合
この場合は、出願人の明らかな誤りとも考えられる場合ですので拒絶されます。
⑵:本願に係る指定商品又は指定役務が引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務に含まれている場合(概念的に含まれている場合は除 く )
この場合も、引用を残せば足りてしまい、後願を権利化する意義は少ないと考えられますので拒絶されます。
【拒絶されない場合】
⑴:本願に係る指定商品又は指定役務のうちの一部が引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務と同一である場合や、引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務が包括表示であり、本願に係る指定商品又は指定役務がそれに含まれる個別表示の場合
この場合は後願を残す意義が存します。そのため、拒絶されません。
⑵:拒絶される場合とされた場合でも、出願人から、本願の指定商品又は指定役務が、先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務とは国際分類の版が異なること等により、実質的に商品・役務の内容が相違するとの主張がなされ、その事実が認められる場合には、「同一の指定商品又は指定役務」であるとの推定が覆ったものとして判断できるため、当該拒絶理由は解消されます。
詳細は、商標審査便覧:41.01 商標法第3条の趣旨に反する場合の審査運用についてをご参照ください。https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/document/index/41_01.pdf