【ブランド一般】ネット時代におけるブランド戦略(1)~属地主義の原則と例外~
2026-07-01
1: 商標法における「属地主義」とその現代的課題
日本の商標権と海外の商標権は別個独立のものであり、それぞれの国の商標権は当該国のみで保護されるというのが、パリ条約の趣旨に基づく「属地主義」の大原則です。
しかし、インターネットの発達により、Webサイトを通じて全世界へ情報を発信することが容易となり、商標が国境を越えて行き交う事態が常態化しています。
この現状は、従来の「属地主義」が想定していた国境という壁を曖昧にさせており、オンライン上での商標使用をいかにして国内での「商標の使用」と捉えるかという、新たな解釈の必要性に迫られています。
2 :「どこの国の法律」で保護されるべきか
Web上の商標使用がどの国の法律によって処理されるべきかという論点において、様々な方が議論をなされ解釈論として分かれているのはさておき、最も重要となるのは「その情報がどの国に向けられているか」という点です。
具体的には、Webサイトの言語設定、当該国に向けた注文受付の可否、契約書の同意確認手順、配送先や決済手段の対応状況などが「向けられているか」を認定する際の判断基準となります。
そのため、日本企業が国内向けに運用しているサイトであっても、海外からの注文が可能な場合、当該国での権利を取得していないと、現地企業から訴訟を提起されるリスクを排除できません。 特に米国のように自国民保護が強く働く法域では、Web上の商標使用に対する権利行使の可能性を考慮する必要があります。
3:まとめ
インターネットの普及により、商標権侵害等の紛争が生ずる可能性は飛躍的に高まっています。 サイト運用を行う企業は、特にアクセスの多い国や商品販売の対象となる国において、サイト名称を含めた商標権の現地取得を検討することが、最も有効なリスク管理策です。
なお、WIPOにおいてインターネット上の知的財産権に関する国際的な議論が継続されていますが、統一的なルール制定には依然として時間を要する見込みです。現時点で出来る範囲で準備をしておくのは好ましいことだと思われます。
■参考裁判例(平成17年(行ケ)第10095号 審決取消請求事件 知財高裁平成17年12月20日)
【概 要】
本件は、被告(商標権者)が保有する「PAPA JOHN'S」商標について、原告が「商標法第50条1項」に基づき、不使用による商標登録取消審判を請求した事案です。 特許庁が審判請求不成立(商標権を維持する)との審決を下したため、原告がその審決の取消しを求めて提訴しました。
「判決では、『Webサイトが日本からもアクセス可能であり、日本の検索エンジンで検索できる』という事実はインターネットの性質上当然の帰結であるとされ、その事実のみをもって『日本国内での商標使用』には該当しないと判断されました。具体的には、サイトの内容が英語のみで構成され、日本の需要者を対象としていないとみなされる場合、国内での商標使用は否定されます。本件においても、この判断に基づき、特許庁の請求棄却審決を取り消す旨の判示がなされました。」
■裁判例紹介
「確かに,証拠(乙8,9,24)によれば,被告は,インターネットのウェブページ(本訴乙8・審判乙3,本訴乙9・審判乙4)において,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示してピザに関する広告を行い,フランチャイジーの募集を行っていること,上記ウェブページには日本からもアクセスが可能であること,上記ウェブページは,日本の検索エンジン「MSNサーチ」,「アップル・エキサイト」等において「papajohns」,「papa john's」の語で検索した場合に直ちに検索できる(本訴乙24・審判乙5,6)ことが認められる。ウ しかし,上記ウェブページは,米国サーバーに設けられたものである上,その内容もすべて英語で表示されたものであって,日本の需要者を対象としたものとは認められない。上記ウェブページは日本からもアクセス可能であり,日本の検索エンジンによっても検索可能であるが,このことは,インターネットのウェブページである以上当然のことであり,同事実によっては上記ウェブページによる広告を日本国内による使用に該当するものということはできない。」





